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Jul 8, 2011

第3回:日本のエコロジカル・フットプリント(1)

“ゆでカエル症候群”というものがある。水の中にカエルを入れ、ゆっくり加熱していくと、上昇する温度変化にカエルは気づかず、茹で上がってしまうまで“気づかない”という話である。それでは私たち日本人は、どうなのであろうか。私たちの活動により、地球環境が確実に劣化・衰退しているという事実を認識し、適切な対策をとっているのであろうか。

今回は、2010年8月に、グローバル・フットプリント・ネットワークと世界自然保護基金(WWFジャパン)が共同で発行した報告書 『エコロジカル・フットプリント・レポート日本2009』をもとに、日本のエコロジカル・フットプリントについて考えていきたい。

高度経済成長、バブル経済、そしてエコロジカル・フットプリント
図1は、日本の1人当たりのエコロジカル・フットプリントを1961年から2006年の時系列にまとめたものだ。すると、日本のエコロジカル・フットプリントは2つの特徴的な拡大期があることがわかる。

まずは1960-70代後半の第1次拡大期である。この時期は、東京オリンピック(1964)・大坂万博(1970)・田中角栄元首相の「列島改造論(1972)」と続く高度経済成長期の真っ只中であり、日本のエコロジカル・フットプリントはGDPの伸びと同じ勢いで増加した。

その後、「一億総中流意識」といわれるほど基礎的な生活環境が整い、エコロジカル・フットプリントもいったん安定しそして減少したが、1980代後半から再び第2の急増期を迎える。いわゆる「バブル経済」の到来である。

エコロジカル・フットプリントと人間開発指数 (HDI) の研究などから、社会はある一定の開発レベルに達すると、フットプリントの増加が生活水準の向上に必ずしも連動するとはいえないことがわかっている。それどころかむしろ膨大な量の廃棄物や環境破壊など、負の影響が強まり持続性を著しく失う。実際、バブル経済は多くの環境を劣化・衰退させて終わった。日本の1人当たりのエコロジカル・フットプリントも減少している。 

海外に依存した日本人の暮らし
次に、日本のバイオキャパシティに目を向けてみる。日本のバイオキャパシティは1961年度には1人当たり1.1ghaであったが、年々減り続け2006年度には0.6ghaにまで落ち込んだ。これを上記のエコロジカル・フットプリントのグラフと見比べると、日本のエコロジカル・フットプリントが常に日本のバイオキャパシティを超過した地域的なオーバーシュートの状態だということがわかる。

第1回で「日本全土を巨大なガラス半球で閉じ込める」という思考実験を紹介したが、日本の生態系のみでは現在の生活水準や経済活動を維持することができないことが、数字で明らかなった。

それでは、なぜ日本が現在の状態を保ち、“生きていく”ことができるのか。それは、貿易に通して海外のバイオキャパシティを輸入できるからである。詳細な分析によると、特に中国とアメリカへの依存度が高く、両国だけで全体の47%以上に達する。

このように、貿易によって日本国内のエコロジカル・オーバーシュートを回避することは可能ではあるが、しかし、これは世界的な資源配分の格差を生みだし、世界的なエコロジカル・オーバーシュートに寄与していくことに他ならない。

このように、海外のバイオキャパシティに対する高い依存体質に気づくことは、経済の安全を確保するためだけでなく、われわれの暮らしが地球全体にどれほどの影響を与えているのかを知るために、とても大切なことである。

冒頭で、水が沸騰して茹で上がるまで気づかないカエルの話をした。私たちは、そのカエルのことを笑うことができるのであろうか? 

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同記事は、6月6日に琉球新報(沖縄)に記載された記事「持続可能な地球〜エコロジカル・フットプリント(3)」をブログ用に加筆・校正したものです。
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尚、『エコロジカル・フットプリント・レポート 日本2009(日本版・英語版)』はWWF ジャパンのホームページより無料でダウンロードすることができる。

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