エコロジカル・フットプリントとは、私たちが活動する上で必要なものを生産・破棄するためにどれだけの土地が必要になるのかを表した数値である。それを生態系が供給できるバイオキャパシティと比較することで、私たちがどれだけ過剰な生活をしているのかが見えてくる。
地球1.5個分の暮らし
図1は、1961年から2007年度までのエコロジカル・フットプリントの推移を、バイオキャパシティとの比較で表したものである。縦軸に地球の数とされているが、これは人類の活動を支えるために何個の地球が必要になるのかを表している。
図からわかるように、1961年には地球の約60%前後のバイオキャパシティで納まっていた人類のエコロジカル・フットプリントは、1970年代に入り地球の生産能力を超過した「エコロジカル・オーバーシュート」の状態に突入した。オーバーシュートは年々増加し続け、2007年には地球のバイオキャパシティを約50%も超過した状態にある。言い換えれば、人類の生活を支えるために地球が1.5個必要だということだ。
このような「エコロジカル・オーバーシュート」の状態が長く続くとは考えにくい。確かに年間に再生産される以上の木材を森林地から得ることはできる。また1年間に繁殖するよりも多くの魚を取ることもできる。しかし、それは銀行に預けていたお金の利子だけで生活できていた人が、さらに多くの出費を重ね利子以上の生活、つまり元本を切り崩して生活しているようなもので、環境の資源ストックを切り崩していることに他ならない。
このように累積されたオーバーシュートは「生物学的負債」と呼ばれ、森林破壊、魚類個体数の減少、気候変動へとつながり、永久に続くことはない。
資源配分の格差
世界のエコロジカル・フットプリントを国別で見てみると、世界の資源配分が必ずしも平等ではないことがわかる。1人当たりのエコロジカル・フットプリントが最も増加しているのは高所得国であり、中所得国はほぼ横這い、低所得国にいたってはわずかに減少している。
例えば、2007年次のアメリカ人の1人当たりのエコロジカル・フットプリントは8.0ghaであるが、もし地球上のすべての人がアメリカ人と同じ生活を行えば、地球が4.5個必要という計算になる。同様に、もし日本と同じ生活なら地球が2.7個、中国なら1.2個分の地球が必要となる計算だ。このようなエコロジカル・フットプリントの不均等な配分は、将来において国際間の資源対立の引き金になりかねない。
エコロジカル・フットプリント=人口×1人当たりの消費量×生産効率
将来のエコロジカル・フットプリントを分析する場合、頭に入れておきたい要素が3つある。それは1) 人口、2) 1人当たりの消費量、そして3) 生産効率である。
例えば、ある国の生産効率が2倍になったとしても、1人当たりの消費量が3倍になれば、たとえ人口が一定でも全体のエコロジカル・フットプリントは増加する。このように、この3つの要素を常に押さえておくと、将来のエコロジカル・フットプリントの動向を捉えやすい。
現実に目を向けてみる。国連の予測によると、2050 年の世界の人口は現在の69億から92 億人近くまで増加する。この人口増加に加え、ブラジル・ロシア・インド・中国といったBRIC諸国が1人当たりの消費を大幅に拡大していくと、人類全体のエコロジカル・フットプリントが地球の生態系に深刻なインパクトを与えることは容易にイメージできる。
実際、生きている地球レポート2010では、現状のまま何も対策を取らなければ、2030年までに地球2個分、2050年までには2.8個分のバイオキャパシティが人類の生活を支えるために必要になると予測している。
有限である地球で人類の経済活動を永久に拡大できるという夢物語から離れ、一日でもはやく新しい発展モデル、つまり「持続可能な発展」に社会を導くために時間を使うべきではないか。
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同記事は、6月4日に琉球新報(沖縄)に記載された記事「持続可能な地球〜エコロジカル・フットプリント(2)」をブログ用に加筆・校正したものです。
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