大学4年次の終わりから約3年間、沖縄・宜野湾市で「古本物語」という古本屋を経営していました。今日はその中から、不思議なお坊さんのお話を。
クーラのまだ入っていない古本屋の中で、汗をかきながら本の整理をしていると、ちょっと小柄のお坊さんが、ぴょんぴょんとはねるように店内に入ってきました。一通り店内の書籍を眺めた後、私の方にふらっとやってきて「頑張っているねぇ。ところで、君は今からどういうことをしたいと考えているの?」と、リズムのいい質問を。
「そうですねぇ、まだ本の量が全然足りないので、どうやって増やそうか考えているんですよ」と私。「どこにその本をおくつもり?」 「あの壁一面に新しい本棚を作ろうと思っているんですよ。でも、今作っちゃうと、ものすごいでっかい空っぽの本棚ができちゃうので、本が増えてから順に足していくするつもりです」と私。「いま作ればいいじゃないか」と坊さん。「本がないじゃないですか」と私。
ちょっと補足すると、古本を購入するルートとしては主に2つあって、卸から古本(または新古書)を大量にまとめて購入する方法と、店頭でお客さんからこつこつと購入する方法。私の場合は資金がなかったので後者のほう。なので、でっかい空っぽの本棚を作ってしまうと、その当時の店内買い取りの回転率から考えて、本棚が埋まるまで約半年くらい必要になる計算でした。
「本が欲しいのなら、本棚をつくりなさい。つくればわかるから」と、その坊さんはまるい笑顔でこういうと、白い軽自動車をチョロQのようにビューンと鳴らしながら、我如古方面へ去って行った。
まるできつねに騙されたような感じがしましたが、「別に何かを失うわけではないし。。」ということで、次の日から「えいやっ」とでっかい本棚をつくってみることに。
結論からいうと、それから2週間もしないうちに、その本棚はびっしりと埋まってしまったのです。まず、店内のたまたま訪れた定年退職後の校長先生が、「この空っぽの本棚に、私の蔵書をぜひ並べさせてください。お役に立てればうれしい」と所有するすべて書籍を寄贈。同じ頃、引っ越しを考えているという某会社の社長さんが、その空っぽの本棚をみて「私も若い時はそうだった。頑張りなさいよ」とすべての書籍を寄贈、という風に。
今振り返ってみると、あの「空っぽの本棚」は「自分がこうなりたい」と具体的に社会に意思表示をする行為だったのだと思います。もし、「本がもっと増えないかなぁ」と頭の中だけで考えていたのでは、あの校長先生や社長さんも決して私を助けようとは思わなかったでしょう。それ以前に、現実的な行動をとること無しには、私達の夢など、他人からは「見る」ことができない。
つまり、夢(または目標)を達成するためには、まず「空っぽの本棚」を作る勇気が大切なのだと。別の言い方をすれば、三線広め隊の上江田さんがいつもおっしゃているように「汗をかくこと、恥をかくこと」だと。
あのお坊さんが、本当にここまで深く考えていたのか。。。それとも「何にも考えてないよ〜ん。ただ、言ってみただけだよぉ〜ん」とけらけら笑うのか、今となっては確かめる術もありませんが。またいつかどこかでひょこっと会える、そんな気がします。
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